・いよいよ決勝戦となったウインターカップはEWIとHANの対決。第二回TM杯からリーグに参加している「オリジナル5」の中でも、特にこの2チームはどちらも第一回TM杯から存続している数少ないチームであり、新興勢力であるSCMが台頭しているこのシーズンのカップ戦決勝にこの両チームが進んでいるというのは感慨深いものがある。
EWIはここまで、第二回TM杯のファーストステージで5チーム中最下位に沈んだ以外はほとんどのシーズンとステージで中位以上をキープし、多くの優勝争いにも絡んできた強豪。メンバーを固定して連携を熟成するその手法は議論の的となったが、今まで第二回TM杯セカンドステージ制覇、第一回桜花杯準優勝、06シーズンセカンドステージ二位、07シーズンファーストステージも3位ながら勝ち点では首位と一点差、さらに現在も首位との勝ち点差3につけて優勝争いを演じるなど、挙げて来た成果を見れば一概に否定することはできないだろう。ただ、それだけ安定した強さを誇りながらもタイトルとなると第二回TM杯練習リーグ制覇、第二回TM杯セカンドステージ制覇に留まり、不思議と縁がないのも一面の事実。EWIと改称してからはタイトルと呼べるものを未だ獲ってはいないこともあり、タイトルへの渇望は大きい。そのEWI、目玉はやはり藤堂に尽きる。ファーストステージではどちらかといえばEWIのエースは鬼澤、の印象が強かったがセカンドステージでチームにフィットしてゴールを量産。カップ戦でもここまで5ゴールと、最強のゴレアドール(点取り屋)ぶりを発揮している。攻撃が藤堂頼み、の批判はついて回るがブレない軸を持っていることは大きな強みだ。
HANはリーグ唯一の「TM純血」を貫く、いわばアスレチック・ビルバオのような主義をもつチーム。地域と地元に根ざすその主義は確かに高邁だが、結果を見る限りでは躍進したといえるシーズンは少ないままここまで来た。そして今春、親善ミニトーナメンを勝ち取り初のタイトル。WBL、FCH、EWIといった強豪たちがひしめいたこの大会はある意味「桜花杯以上に困難なカップ戦」とまで言われたのだが、桜花杯の裏開催であり、また後付けで非公式であるということからも正当な評価を得てはいない。それを制したのは実力によるものだと主張するためにもこのタイトルは是が非でも欲しいところだ。HANの売りはカップ戦4試合で無失点を誇るその堅守。八重、藤堂、水島でゴール前に壁を築き、さらにその前にパット、清川、鞠川と並べた守備ブロックは突破するのには骨が折れる。相手が攻め疲れたところを両ウイングに配する高見、神条で起点を作り、伊集院から主人の連携で崩す―そういったパターンが推測される。
藤堂vsHAN守備陣―その図式と予想するが果たして。
(拾)
・Wカップ3位決定戦は去年の最強チーム決定戦の組み合わせ。優勝が掛からない試合とあってモチベーションの持って行きどころは難しいが、オリンピックのメダルを例えに出すまでもなく、ポルトガルでは3位決定戦に敗れた2006年のワールドカップよりも3位に輝いた1966年大会が未だに誇らしげに語られている。状況に関わらず両チームのファイトを期待したい。
FCHは最早定番となった感のある4-4-2、マオは中盤で試合を作らせ前線、千鳥の相方は鬼澤。高さのある鞠川、波多野のストッパーコンビだが、高さより足元狙いの綾崎・羽柴コンビをどこまで封じられるかがまず見所。ボランチを含めた守備ブロックには定評があるだけに、なおのこと守備一辺倒になる形は避けなければならない。
WBLは先のSSS戦のオーダーから野崎を千葉に入れ替えた形。攻撃では綾崎、羽柴の連携とともに左に張り出した佐野倉からの仕掛けが鍵を握るが、それは同時に右に作ったスペースをいかに活用するか、ということにも直結している。周囲を使うのが上手い藤崎、井上と並んでいるだけに受け手たる羽柴の積極的な動きが求められるだろう。
(拾)
(11/28 19:00Kick Off トラッド・ブリック)
EWI FCH
4 - 4
PK 4-3
前半 1-1
後半 2-2
延前 0-0
延後 1-1
PK 4-3
得点者
12分 10 藤崎←18マオ(FCH)
13分 3 橘←7 陽ノ下(EWI)
49分 10 藤崎(FCH)
57分 19 藤堂←17 井上(EWI)
61分 19 藤堂←24 難波(EWI)
73分 21 鬼澤(FCH)
109分 19 藤堂←10 藤崎(EWI)
113分 9 藤堂(FCH)
警告
97分 19 藤堂(EWI)
119分 9 藤堂(FCH)
WOM
藤堂(EWI)
・この大一番でハットトリック、チームを決勝進出へ導いた。
・まず12分。マオのフライスルーに上手く抜け出した藤崎がこの頃一部で流行気味のループシュート、これが決まってFCHが先手を取ったが1分後にEWIは橘の攻め上がりからチャンスを作り、藤崎→陽ノ下と渡った後そのままエリア内に切れ込んだ橘がこれを決め、EWI同点に。打ち合いの予感を漂わせたが前半は動きがないまま折り返す。ペース的にはホームEWIが仕掛け、FCHがそれを受ける展開だったが後半早々49分、エリア内で受けたFCH藤崎がキックフェイントでDFを置き去ってシュート、個人技で一度は勝ち越しに成功する。だが57分、ロングボールの競り合いからの零れを井上がヘッドで再度前線に送り、それをEWI藤堂が決めてまたも同点、シーソーゲームの様相を見せる。直後にEWIは難波を投入、これが4分後に結実する。61分、その難波が右を抉って折り返し、これを藤堂が頭から飛び込んでこの試合で初めてEWIは勝ち越しに成功した。展開的に、またホームであることを考えてもEWI勝利濃厚、と見えたが10分後にもう一波乱。セットプレーの零れを押し込んだのはFCH鬼澤、またも振り出しに戻った。得点はこの後推移しないまま90分終了、延長戦へ移行。やはりEWI押し気味のペースだったが前半は得点の動きがないまま後半へ、後半開始早々109分。スローインを受けた藤崎がスルーパス、これを藤堂が沈めてEWIが二度目の勝ち越しを果たすが、4分後にはFCH藤堂がDFから奪取してそのまま決めて負い付きFCHも譲らず、PK戦へ。ここで二階堂が一本、西村が二本止め、西村はある意味今日最大の働きをしEWIが決勝進出を果たした。
EWIは試合の主導権を握る展開ながら先制点を許し、たびたび突き放されたのはやはり守備陣の課題。両翼が神戸、陽ノ下ではやはり日向にかかる守備上の負担は大きい。攻撃は藤堂頼みの印象は拭えないところで、こうなると藤堂をこの先どう生かすか、を焦点にするしかないだろう。
FCHは緊張があったか、エース千鳥の不発が響いた。単に得点を挙げられなかっただけでなく、先発ツートップが二人合わせてシュート二本とあって前半と少しで総替えせざるを得ず、中盤をフレッシュにする交代の選択肢を減らした結果中盤4人は120分フル出場となり、3決でのパフォーマンスに不安を残す結果となってしまった。
(拾)
・決勝トーナメント開幕のウインターカップ、初対決はEWIとFCH。お互い最近の試合では疲労を重ねたメンバーが多いこともあってどう出るか見え難い対戦。
EWIの陣形は後ろを軽めにした3-5-2で、3バック1DMFの両脇をスピードのある陽ノ下、神戸コンビで固めるという形。前線はいつものように音無を左に開いており、右のスペースを神戸が上手く突けるかどうかが課題となるが、その裏のケアを受け持つ日向の出来が試合を左右しそう。エース藤堂がここ3試合ゴールから遠ざかっているのはやや心配なところ。
FCHは通常通りの4-4-2で、前線は千鳥と熱姫を組ませる。今までこのツートップを先発で組み合わせたのは1試合のみで、その試合に勝っていないのは微妙に不安だが、千鳥は休養後でコンディションには問題が少ないはず。マオ、藤崎との連携を生かしてゴールに迫りたい。サイドバック神条、一文字は積極的に上がって数的優勢を作りたいが、これまでのパターンで見るとあまり上がりを重視していないようでもあり、まず守備から、の慎重な試合運びになると予想。
(拾)